Vol.09EV急速充電器導入事例
業界に先駆けEVタクシーを導入 ~エムケイ株式会社が進める 「2030年度全社ZEV化」達成に向けた道筋〜
MK石油株式会社 代表取締役/中島勇輔様(右側)
MK株式会社 営業本部営業部課長/田中匡様(左側)

今回のインタビュー先

今回のインタビュー先

タクシー業界大手のエムケイ株式会社は、京都を拠点にいち早くZEV車両導入を進めてきたパイオニアであり、2021年にはタクシー会社として全国で初めて、2030年度までに全車ZEV化の達成を目指すことを表明しています。今回はEVタクシーおよび自社専用のEV急速充電器導入の経緯や運用面の工夫、さらには地域に根差した社会貢献の取り組みについて、MK石油株式会社の中島勇輔様とMK株式会社の田中匡様にお話を伺いました。

2030年度の全社ZEV化達成を目指し、EV導入を加速

ーはじめに、EVタクシーとEV急速充電器の導入に携わることになった経緯について教えてください。

中島 私が代表を務めるMK石油では、ガソリンスタンドを中心に自動車関連の事業を幅広く展開しています。MKグループ内でEVタクシーの導入拡大を図るため、充電インフラの整備を担うことになりました。

田中 私はMK株式会社で、EVタクシー車両の導入から急速充電器の設置、日々の運用管理まで幅広く担当しています。MK石油とMKタクシーは横断的に連携しており、e-Mobility Powerのサービスを利用した急速充電器設置プロジェクトも中島とともに進めてきました。

ー「2030年に全車ZEV化達成を目指す」方針が出たときの印象はいかがでしたか?

中島 当時はまだEVの車種も少なかったので、最初に話が出た時は、正直とても驚きましたね。2035年頃にようやく達成できるような水準ではないかと考えていましたので、2030年までに全車両をZEV化するという目標は非常に大きな挑戦だと感じました。

田中 我々は交通インフラを担う立場にある以上、脱炭素への対応を避けては通れません。難題ではありましたが、MKグループとして「必ずやり遂げなければならない取り組み」と位置づけました。最初の一歩として、2017年にEVを5台導入して試験運用を始めましたが、充電時間の長さや航続距離の不足といった課題が浮き彫りになりました。状況が大きく変わったのは2022年、ヒョンデの「IONIQ 5」を導入してからです。タクシーの走行距離は年間10万キロにも及ぶのですが、IONIQ 5はもともと故障が少なく安定した運用が可能なEVで、更にMKグループの整備工場がヒョンデの認定整備工場となり、自社で車両のメンテナンスを行える体制が整ったこともあり、2023年に大量導入を決断しました。同時期にe-Mobility Powerの「充電器導入・運用サービス」を利用し、複数の営業所に自社専用の急速充電器を設置したことにより、EVタクシーの運用体制が一気に整備されました。現在は252台のEVタクシーを保有し、日々多くのお客様に乗車いただいています。

静かさと快適性が圧倒的な支持を集めるEVタクシー

ーお客様や社内からのEV車両への反応はいかがでしたか?

田中 最初は社員から「EVなんて使えないんじゃないか」という声が多く上がりました。しかし実際に使ってみると、非常に静かな乗り心地で先進装備も備わっており、扱いやすいという評価がほとんどでした。

中島 お客様からは「静かで快適」「乗り心地がいい」と好評です。特に欧州のお客さまは環境意識が高く、ゼロエミッションであることを歓迎してくださいます。また、企業イベントではEVを指定して予約されるケースも増えています。

ー営業所には何台の急速充電器を設置しているのでしょうか?

田中 現在、e-Mobility Powerと契約している急速充電器が11基あり、自社で設置した分なども含めると計19基を設置しています。タクシーは昼夜交代で1日24時間近く稼働することもありますので、充電時間の管理が重要です。朝夕のドライバーの交代時間を30分単位で調整し、1口あたり1日10~12台の車両を効率的に充電しています。現状のインフラで400台規模までは対応できる見込みです。

ー多くのEV車両を運用するうえで、貴社ならではの工夫をしている取り組みがありましたら、教えていただけますか?

田中 当社の経験上、急速充電は短時間で大量の電力を流し込める一方で、バッテリーセルの不均衡が生じやすく、バッテリーの劣化を早めるおそれがあると考えているため、急速充電だけではなく、月2回程度普通充電も併用することで、車載バッテリーを労わる方法をとっています。この方法を「バランス充電」と呼んでいます。タクシーは年間で10万キロ以上走るので、車載電池のコンディション管理が不可欠です。バランス充電を定期的に実施することで、25万キロ以上走行した車両でも、SOH(バッテリーの健全度)95%以上を維持できている車両が多くあります。

社会的責任と地域貢献を担う全車EV化への挑戦

ーe-Mobility Powerの「充電器導入・運用サービス」を利用して充電器を導入したメリットを教えてください。

中島 充電器の設置から運用、保守までを一括で任せられるのは大きな安心材料です。180kW級の急速充電器を導入してからは、ドライバーからも「充電が速くなった」と好評ですし、従来よりも短時間で航続距離が回復するため、運行効率が向上しました。そのおかげで我々は運行に専念でき、充電に関する負担を大きく減らすことができています。

田中 充電器のメンテナンスや充電実績の管理を自社で担う必要がない点も助かっています。万一の時には現地からコールセンターに相談すれば対応していただけるため、サポート体制を含めて非常に満足しています。

ーEV導入は環境面だけでなく、社会的な取り組みにもつながっていると伺いました。

田中 私たちは交通インフラを担う企業として、CO₂排出抑制は当然の責務と考えています。2025年度には30%のZEV化を達成し、2030年度には全車両のZEV化を実現する計画です。その過程で、EVタクシーの走行距離分の充電で発生するCO₂をカーボンオフセットする「カーボンニュートラルオプション」を導入しており、ガソリン車からEVへの置き換えに伴うCO2の削減と併せて、実質的にカーボンニュートラルにすることができるサービスです。

中島 災害時には、MKグループが保有するEVを避難所等の電源として活用できるよう、自治体と協定を締結しています。停電時に暖房や照明、携帯電話の充電などに利用でき、地域住民の皆様の安心につながります。観光都市・京都ならではのサステナブルツーリズムを支える役割も果たしていきたいと考えています。

ー最後に、今後の展望を聞かせてください。

田中 年度半ばではありますが、既に2025年度の目標である30%のZEV化を達成しました。2030年度までに全車ZEV化という目標に向けて進めていますが、ネックになっているのはワンボックスタイプや大型車の選択肢がまだ市場に無いことです。修学旅行などで主力となる大型車がEV化されれば、目標達成は十分可能だと考えています。また、EVの普及が進むことで車両価格がもう少し安価になるとありがたいです。当社は「決めたら必ずやり切る」会社です。選択肢さえあれば何が何でも目標達成に向けて進めます。ただし、環境対応だけに振り切って経済性を失ってしまっては、会社の存続が難しくなりますので、全車ZEV化を実現しつつも収益を確保する、そのバランスを取りながら進めることが重要だと考えています。

中島 地域との災害協力はもちろん、タクシー業界における先駆けとして、脱炭素の取り組みのモデル企業となれるよう、今後もZEV化を進めてまいります。


<編集後記>
今回、MK山科営業所までの移動手段として、エムケイ様のEVタクシー(BMW i7)を利用しました。
MKタクシーグループのWebサイトから簡単に「EVタクシーを指定した貸切予約」ができ、とても便利。MKタクシーアプリからも予約が可能です(車種は予約状況によるとのこと)。
美しい京都の街並みを眺めながら、エムケイ様ならではの上質なサービスと、EVタクシーならではの静かで快適な乗り心地を体験してみてはいかがでしょうか。